はるのよの… 分類和歌 「春の夜の闇(やみ)はあやなし梅の花色こそ見えね香(か)やは隠るる」出典古今集 春上・凡河内躬恒(おほしかふちのみつね)[訳] 春の夜の闇は道理に合わない。梅の花は、たしかに姿が闇に隠されて見えないけれど、その香りは隠れるだろうか、いや、隠れはしない。 鑑賞闇の中にほのかに漂う梅の花のかぐわしさを賞美したもの。「見えね」の「ね」は係助詞「こそ」の結びで、打消の助動詞「ず」の已然形。下に逆接関係で続いている。「隠るる」も係助詞「やは」の結びで、連体形である。 はるのよの… 分類和歌「春の夜の夢の浮き橋とだえして峰に別るる横雲の空」出典新古今集 春上・藤原定家(ふぢはらのさだいへ)[訳] 春の夜の浮き橋、そんなはかない夢がとぎれて、外を見ると、もう明け方の空に、横にたなびく雲が峰から静かに離れて行くよ。 鑑賞春の明け方の情趣を妖艶(ようえん)にとらえ、定家の代表作とされる歌。雲は夕暮れには山に帰り、翌暁には峰を離れるという、当時の自然現象の考え方を心得て、この歌を味わいたい。 はるのよの… 分類和歌出典百人一首 「春の夜の夢ばかりなる手枕(たまくら)にかひなく立たむ名こそ惜しけれ」出典千載集 雑上・周防内侍(すはうのないし)[訳] 短い春の夜の夢ほどのかりそめの戯れに、あなたの腕を枕としてお借りなどしたら、なんの甲斐(かい)もなく立ちそうな(私の)恋の浮名(うきな)が口惜しく思われますよ。 鑑賞作者が「枕をがな(=枕が欲しい)」とつぶやいたのを聞きつけた大納言忠家(だいなごんただいえ)が、「これを枕に」と、腕を御簾(みす)の下から差し入れたのに対する当意即妙の歌。「かひなく」の「かひな」に「腕(かいな)」をかけている。 |