おと 【音】 名詞① 物音。響き。出典古今集 秋上「秋来(き)ぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞ驚かれぬる」[訳] ⇒あききぬと…。②声。鳴き声。出典枕草子 鳥は「十年ばかりさぶらひて聞きしに、まことにさらにおとせざりき」[訳] 十年ほど宮仕えをして聞いていたが、本当に、全然(うぐいすの)鳴き声はしなかった。③〔多く下に打消の語を伴って〕訪問。たより。出典竹取物語 竜の頸の玉「夜昼待ち給(たま)ふに、年越ゆるまでおともせず」[訳] 夜も昼も待っていらっしゃるのに、年を越すまでたよりもしてこない。④〔多く「おとに聞く」「おとに聞こゆ」の形で〕うわさ。評判。出典金葉集 恋下「おとに聞くたかしの浜のあだ波はかけじや袖(そで)の濡(ぬ)れもこそすれ」[訳] ⇒おとにきく…。 と 【音】 名詞音(おと)。声。響き。出典万葉集 二二〇「波のと」◆「おと(音)」の変化した語。 ね 【音】 名詞音。なき声。ひびき。▽情感のこもる、音楽的な音。(人や動物の)泣(鳴)き声や、楽器などの響く音。出典枕草子 春はあけぼの「日入りはてて、風の音(おと)、虫のねなど、はた言ふべきにもあらず」[訳] 日がすっかり沈んでしまって、(耳に聞こえてくる)風の音や虫の鳴き声など(の趣のあることは)、さらにまた言うまでもない。 参考「ね」と「おと」の違い 「ね」が人の心に響く音であるのに対して、「おと」は雑音的なものを含め、風や鐘の音など比較的大きい音をいう。 |