たか・し 【高し】 形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ} ①高い。上のほうにある。出典源氏物語 若紫「たかき所にて、ここかしこ、僧坊どもあらはに見下ろさるる」[訳] 高い場所なので、あちこちにある、僧の住居がくまなく見下ろされる。②高く積もっている。厚みがある。出典伊勢物語 八三「小野にまうでたるに、比叡(ひえ)の山のふもとなれば、雪いとたかし」[訳] 小野に参上したとき、比叡山のふもとなので、雪がとても高く積もっている。③(声・音が)大きい。高い。出典枕草子 中納言まゐり給ひて「『まことにかばかりのは見えざりつ』と言(こと)たかくのたまへば」[訳] 「まことにこれほどの(すぐれた)もの(=扇の骨)は目にしたことがなかった」と声を大きくおっしゃるので。④評判が高い。広く知られている。出典今昔物語集 三一・三三「このこと、世に聞こえたかくなりてけり」[訳] このこと(=この女の子の美しさ)が世間でうわさになり評判が高くなってしまった。⑤身分が高い。すぐれている。高貴だ。出典方丈記 「棟(むね)を並べ甍(いらか)を争へる、たかきいやしき、人のすまひは」[訳] 棟を並べ屋根の高さを張り合っている、身分が高い人や低い人の住居は。⑥自尊心がある。考えがすぐれている。高尚である。出典源氏物語 少女「男はくちをしき際(きは)の人だに、心をたかうこそつかふなれ」[訳] 男は、卑しい身分の人でさえ自尊心を高くもつということだ。◇「たかう」はウ音便。⑦年をとっている。古い。昔のことだ。年月がたっている。出典古今集 雑体「身はいやしくて年たかきことの苦しさ」[訳] 身分は低くて、年をとっていることのつらさよ。 |