あづさゆみ… 分類和歌 「あづさ弓(=枕詞(まくらことば))引けど引かねど昔より心は君に寄りにしものを」出典伊勢物語 二四[訳] あなたがわたしの心を引こうと引くまいと、昔からわたしの心はあなたに傾いていたのに。 鑑賞宮仕えのため三年間家を留守にしている間に妻が再婚してしまい、それを知って去ってゆく夫に妻が詠んでやった歌。「引く」は心を引く、愛する意。弓は引くとその本と末が寄るところから「寄る」の縁語。言外に、それなのに私を捨てて去ってゆくのはうらめしいの意を含む。次項の歌の返歌。 あづさゆみ… 分類和歌「あづさ弓ま弓槻弓(つきゆみ)年を経てわがせしがごとうるはしみせよ」出典伊勢物語 二四[訳] 長年にわたってわたしがあなたにしたように、新しい夫をすばらしい人として愛しなさい。 鑑賞自分の留守中に妻が再婚し、それを知って妻のもとを去ってゆく男の歌。「あづさ弓」は梓(あずさ)の木で、「ま弓」は檀(まゆみ)の木で、「槻弓」は槻の木で作った弓。上二句は、三種の弓を並べて最後の「槻弓」の「槻」に「月」をかけ、年月の意から「年」を導いた序詞(じよことば)となっている。前項の歌はこの歌の返歌。 あづさ-ゆみ 【梓弓】 名詞梓の木で作った丸木の弓。狩猟のほか、祭りにも用いられた。 あづさ-ゆみ 【梓弓】 分類枕詞①弓を引き、矢を射るときの動作・状態から「ひく」「はる」「い」「いる」にかかる。出典伊勢物語 二四「あづさゆみ引けど」[訳] ⇒あづさゆみひけどひかねど…。②射ると音が出るところから「音」にかかる。出典万葉集 二一七「あづさゆみ音聞く我も」[訳] うわさを聞いた私も。③弓の部分の名から「すゑ」「つる」にかかる。出典万葉集 二九八五「あづさゆみ末はし知らず」[訳] 行く末はわからない。 |