あい-な・し 形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ} ①気に入らない。不快である。出典源氏物語 桐壺「上達部(かんだちめ)・上人(うへびと)なども、あいなく目をそばめつつ」[訳] 上達部や殿上人なども、みな気に入らなくて目をそむけて。②つまらない。おもしろくない。出典徒然草 七三「世に語り伝ふること、まことはあいなきにや、多くはみな虚言(そらごと)なり」[訳] 世間に語り伝えていることは、真実はつまらないのであろうか、多くはみんなつくりごとである。③不似合いだ。不調和だ。出典枕草子 木の花は「げに、葉の色よりはじめて、あいなく見ゆるを、唐土(もろこし)には限りなきものにて、文(ふみ)にも作る」[訳] (梨(なし)の花は)ほんとうに、葉の色からして(風流なことには)不似合いに見えるが、中国ではこの上なくすばらしいものとして、漢詩にも作る。④〔連用形「あいなく」「あいなう」の形で〕わけもなく。出典源氏物語 澪標「おほかたの世の人もあいなくうれしきことに喜び聞こえける」[訳] 世間一般の人もわけもなくうれしいこととしてお喜び申し上げた。 参考中古から「あいなし」「あひなし」の両形の表記がある。 |