と 格助詞《接続》体言や体言に準ずる語、引用句などに付く。 ①〔動作を共にする相手〕…と。…と一緒に。出典源氏物語 若紫「何事ぞや。童(わらは)べと腹立ち給(たま)へるか」[訳] 何事か。子供たちとけんかしなさったのか。②〔比較の基準〕…と。…に比べて。出典源氏物語 玉鬘「かたちなどは、かの昔の夕顔と劣らじや」[訳] 容貌(ようぼう)などは、あの昔の夕顔に比べて劣らないだろうよ。③〔引用〕…と。▽「言ふ」「思ふ」「聞く」などの内容を示す。出典伊勢物語 九「『これなむ都鳥』と言ふを聞きて」[訳] 「これが都鳥だよ」と(船頭が)言うのを聞いて。④〔目的〕…として。…と言って。…と思って。出典竹取物語 かぐや姫の昇天「脱ぎ置く衣(きぬ)を形見と見給(たま)へ」[訳] この脱いで置く着物を私の形見と思ってご覧ください。⑤〔変化の結果〕…と。…に。…となって。出典徒然草 三〇「古き墳(つか)はすかれて田となりぬ」[訳] 古い墳墓は掘り起こされて田になってしまった。⑥〔比喩(ひゆ)〕…のように。出典更級日記 大納言殿の姫君「笛の音のただ秋風と聞こゆるに」[訳] 笛の音がまるで秋風のように聞こえるというのに。⑦〔強意〕〔同じ動詞の間に用いて〕(ア)…ものはすべて。▽動詞の意味を強める。出典古今集 仮名序「生きとし生ける者、いづれか歌を詠まざりける」[訳] 生きているものはすべて、どれが歌を詠まなかったか、いや詠まないものはなかった。(イ)どんどん…する。▽動作の進行を表す。出典宇治拾遺 三・一六「食ひと食ひたる人々も、子供もわれも」[訳] どんどん食いに食っている人々も、子供も自分も。⑧〔並列〕…と。出典伊勢物語 九「白き鳥の、嘴(はし)と脚と赤き、鴫(しぎ)の大きさなる」[訳] 白い鳥であって、くちばしと脚とが赤い、鴫くらいの大きさの(鳥)。 参考⑧を並立助詞とする説もある。 と 副詞そう。そのように。あのように。出典源氏物語 東屋「と言ひかく言ひ、恨み給(たま)ふ」[訳] ああ言い、こう言いして、お恨みになる。◆ふつう、副詞「かく(かう)」と対にして用いられる。 と 接続助詞《接続》動詞型活用・形容動詞型活用の語の終止形、形容詞型の活用語および打消の助動詞「ず」の連用形に付く。〔逆接の仮定条件〕たとえ…ても。…としても。出典蜻蛉日記 上「穂に出(い)でたりとかひやなからむ」[訳] (花すすきが)穂に出たとしても(かいない人に来いと言うのと同じで)むだであろうよ。 語法形容詞型の活用語、打消の助動詞「ず」に付く場合、それらを未然形と見る立場もある。 参考同じ逆接仮定条件の接続助詞「とも」に比べて例はきわめて少ないが、主として会話文や和歌に現れる。 と タリ活用形容動詞の連用形語尾。出典平家物語 三・法印問答「凡(およ)そ、天心は、蒼々(さうさう)としてはかりがたし」[訳] 全く、天の心はどこまでも青々として推測できない。 と 名詞〔多く「…とに」の形で〕とき。あいだ。うち。出典万葉集 三七四七「はや帰りませ恋ひ死なぬとに」[訳] 早く帰って来てください。(私が)恋い焦がれて死なないうちに。 と 断定の助動詞「たり」の連用形。 と 【音】 名詞音(おと)。声。響き。出典万葉集 二二〇「波のと」◆「おと(音)」の変化した語。 と 【門・戸】 名詞①出入り口。戸口。②瀬戸。海峡。両岸が迫って、水の流れの出入り口となる所。出典万葉集 二五五「明石(あかし)のとより大和島見ゆ」[訳] ⇒あまざかる…。③戸。扉。出典竹取物語 かぐや姫の昇天「立て籠(こ)めたるところのと、すなはち、ただ開(あ)きに開きぬ」[訳] 閉め切っておいた所の戸が、すぐに、ただもうどんどん開いてしまった。 と 【外】 名詞外(そと)。外側。屋外。[反対語] 内(うち)。⇒そと とどろ(に・と) 【轟(に・と)】 副詞どうどう。ごうごう。▽大きな音が鳴り響くさま。出典金槐集 雑「大海の磯(いそ)もとどろに寄する波」[訳] ⇒おほうみの…。 -と 【所・処】 接尾語…する所。…の場所。「隈(くま)と」「臥(ふし)ど」◆「ど」と濁ることが多い。 |