ぬ 助動詞 ナ変型《接続》活用語の連用形に付く。 ①〔完了〕…てしまった。…てしまう。…た。出典古今集 秋上「秋来(き)ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」[訳] ⇒あききぬと…。②〔確述〕きっと…だろう。間違いなく…はずだ。▽多く、「む」「らむ」「べし」など推量の意を表す語とともに用いられて、その事態が確実に起こることを予想し強調する。出典源氏物語 桐壺「世の例(ためし)にもなりぬべき御もてなしなり」[訳] 世間の話の種にもきっとなるだろうに違いないご処遇である。③〔並列〕…たり…たり。▽「…ぬ…ぬ」の形で、動作が並行する意を表す。出典平家物語 一一・那須与一「白波の上にただよひ、浮きぬ沈みぬゆられければ」[訳] (扇は)白波の上に漂って、浮いたり沈んだりしながら揺られていたので。◇中世以降の用法。 語法(1)完了の助動詞⇒つ(2)「つ」との違い⇒つ 参考完了と確述(強意)の見分け方 ぬ 打消の助動詞「ず」の連体形。 ぬ 【寝】 自動詞 ナ行下二段活用活用{ね/ね/ぬ/ぬる/ぬれ/ねよ}寝る。眠る。横になる。出典更級日記 大納言殿の姫君「みな人もねたる夜中ばかりに、縁に出(い)でゐて」[訳] 家の人が皆眠っている真夜中ごろに、縁に出て座って。 ぬ 【野】 名詞野原。野。出典万葉集 四三八七「千葉のぬの児手柏(このてがしは)」[訳] 千葉の野原の児手柏(という木のように)。 参考江戸時代の国学者が、「の」と読むべき万葉仮名を「ぬ」と誤読して生じた語とされる。一説に、「野」の上代の東国方言とも。 |